注目される経営指標はいつも同じではなく、安定している時と危機の時では視点が異なります。現在はコロナ禍に伴う戦後最大級の危機ですから、危機乗り切りの視点からの経営指標にスポットが当たります。

 コロナ禍前の安定していた時期において、上場企業の経営者が最も重視してきた指標はROE(自己資本利益率)でした。ROEは株主資本に対する収益性を表現します。したがって、ROEが高いということは株主資本に対する収益性が高いということになり、株式は買われ、経営者は評価されます。逆にROEが低ければ、経営能力に疑問符が付きます。

 ROEは当期純利益を自己資本で割って算定されます。ROEを高くするためには、分子である当期純利益を増やすことが王道ですが、当期純利益を増やすことは簡単ではありませんから、分母である自己資本を減少させることも重要な手段となります。

 自己資本減少のための最も効果的な方法は、株主還元です。まず配当を増加させます。さらに余裕資金があれば、手持ちのキャッシュで自己株式を買い取ることにより、自己資本を圧縮させます。余裕資金がなければ、借入金で資金を作って、自己株式を取得することもあります。借入金を多くして、自己資本を減らしROEを引き上げるのです。これがレバレッジ経営です。レバレッジ経営はROEを高めるために自己資本を圧縮するのですから、安全性指標の自己資本比率は低下します。安定している時代の会社に求められるのは、安全性より収益性です。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)