では、感染症流行下において、小規模事業者では具体的にどのような商工会・商工会議所の支援を活用した取組みが行われているのでしょうか。そこで中小企業庁編『2021年版小規模企業白書』において、感染症流行後に商工会と連携しながら積極的に新規事業に取組んだ企業の事例として取り上げられた、有限会社松輝製鋼(三重県)の取組みについてみていきましょう。

 有限会社松輝製網は、地場産業であった漁網の製造販売業を営みながら、その縫製技術を生かして家庭用のオーダーカーテン等を製造する企業です。感染症流行下では、観光業や飲食店の需要が減少し、同社の漁網も販売不振に陥るとともに、カーテンの受注も伸びない状況となりました。

 同社社長は、2020年3月初旬、カーテンの端切れで従業員とその家族にマスクを作って支給し好評を得たことを契機に、4月初旬に抗ウイルスのカーテン生地を活用したマスクの販売を視野に商品開発を開始しました。デザインのスキルを持ったパートスタッフの活躍もあって4月中旬には商品が完成、近隣の帽子縫製工場に協力を要請し、月産数千枚の製造能力を確保しました。同時進行で、他社のマスクとの差別化のための商品改良を試みていたところ、副業で着付け師をしているスタッフが、和柄マスクを考案しました。

 2020年4月中旬、商工会に助言を求めたところ高い評価が得られ、 経営指導員が補助金の申請を支援しました。同社は補助金で専用ミシン等を購入し、5月中旬にはマスクの量産を開始しました。商工会はその後も、販路開拓などの支援を継続しました。

 このように補助金申請や販路開拓がなどの商工会の支援を活用して新規事業開発を推進することが可能となるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)