貧富の格差の拡大が世界的に話題です。そこで、今回は上場企業の役員報酬と従業員の賃金格差の問題を考えてみましょう。

 消費低迷の主因は労働者の賃金が伸びないことにあると言われている中で、賃金格差が拡大しているのですから、役員報酬は増大していることになります。なぜ、一般従業員の賃金は伸びないのに、上場企業の役員報酬だけは増加するのか、何か釈然としないものが残ります。

 最近よく報道されているように、従業員の賃金はほとんど上昇していません。この間、企業業績は好調で内部留保も史上最高に積み上がっているにも関わらず、それが従業員の賃金上昇に反映されていないのです。なぜ、企業業績が従業員の賃金に結び付かないのかについて、明快な答えはなく、現代日本経済の大きな論争テーマとなっているほどです。一方、上場企業の役員報酬は上昇しています。その理由は役員報酬に占める株式報酬や業績連動型賞与の比重が増加していることにあります。この間、企業業績は悪くありませんでした。また、株価も企業業績に加え、日銀やGPIF(年金積立金管理運用法人)の買い支えもあり、高値を維持していました。したがって、役員報酬は増えたのです。

 つまり、従業員の賃金は固定的にもかかわらず、上場企業の役員報酬は会社の業績や株価によりヴィヴィッドに反応し、増加しました。その結果、上場企業の役員と従業員の賃金格差が拡大しているというわけです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)