ただ、こうした資産スリム化経営が正当化されるのは、平常時に社会全体のシステムが円滑に動いているからです。しかし、今回の新型コロナウイルスのようなことが起こり、そのシステムの一部でも目詰まりを起こすと、途端に事業が立ち行かなくなります。
 非常時を考えれば、在庫は余裕を持つのが望ましく、また、非常時に最も役立つのは何といっても現金です。現金を豊富に持っていれば、非常時に不測の事態が起こっても何とか持ち堪えることができます。

 資産には、株式のように非常時に減損リスクが顕在化する資産もありますから、注意しなければなりませんが、一般的には、現金のような流動性の高い資産を非常時に保有しておくことは有効です。
 現金の重要性の延長線上に考えれば、銀行取引も大切です。財務に余裕のある企業は平常時には銀行取引の必要性を感じませんから、銀行とは疎遠になりがちです。
 しかし、非常時には何が起きるか分かりません。手持ちの現金では足りない局面が出てくるかもしれません。そうしたときに、頼りになるのは銀行です。しかし、銀行もいきなり「カネが足りなくなったから、貸してくれと」言われて、すぐに対応するほど甘くはありません。平常時から情報交換を密にし、財務の状況なり、会社の課題を理解しておいてもらえれば、迅速な対応が期待できます。

 平常時がいつまでも続くものとして、効率のみを優先して、極端に切り詰めた経営を行っていると、非常時の対応が難しくなります。平常時から非常時も想定した、余裕を持った経営を行っていくことが必要だと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)