新型コロナウイルスの蔓延は企業業績の悪化を招来しています。事業そのものの業績不振による損益悪化はやむをえないのですが、現在の会計基準では本業の収益低下が連鎖的に会計上の損失を膨らませ、結果的に大きな最終損失を招くことに注意しなければなりません。その代表的な事例が減損会計と税効果会計です。
固定資産は原則として取得価格で貸借対照表に計上されます。しかし、その価格の妥当性を検証することが求められます。減損会計では、固定資産の価格には将来その資産が生む収益力が反映されると考えます。たとえば、賃貸アパートを購入しようとする場合、同じ場所で同じ形態のものでも、満室のアパートと半分しか埋まっていないアパートでは購入価格に差があります。それなら、当初購入したときには満室であったアパートの住居人の半分が出て行ってしまったとすると、その賃貸アパートの価格は下がったことになります。その価格低下を財務諸表に表現させようとするのが減損会計です。
事業用の固定資産も同様です。建物や機械を購入する場合、これからの事業展開における収益で回収できると判断する価格で、建物や機械を購入しているはずです。それが当初の思惑と異なり、新型コロナウイルスによる自粛の影響で、その固定資産で生産される製品の需要が落ち込み、取得価格が回収できないほど収益が落ち込めば、減損損失の計上を検討しなければなりません。
減損損失は、過去に他の企業を買収や合併した時に計上した“のれん”においても発生します。買収対象企業の収益力を前提に計算された“のれん”は、その企業の収益力が大きく落ち込んだ時には減損を迫られる可能性があります。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)