税効果会計とは会計と税務の認識の違いを調整する会計処理です。たとえば、会計上の費用認識は今期で、税務上の損金認識は来期になる場合、今期納付の法人税額は会計上の利益に比べて過大になります。実際に法人税額が減るのは、将来その費用が税務上損金と認識された時点になります。こうした場合、今期納付の法人税は将来の法人税の前払いと考えて、貸借対照表に繰延税金資産という資産を計上します(同時に、損益計算書には法人税等調整額という利益が発生します)。ただ、この繰延税金資産は法人税の前払効果が認められるときにだけ計上できます。ところが、その将来に所得(利益)がなければ、元々税金がないのですから、そこで損金が増えても税額は減少せず、税額の前払効果は認められません。この場合は、繰延税金資産の資産性が否定されます。将来の収益予想も落ち込めば、収益力があるという前提で計上した繰延税金資産は取り崩さなければならなくなり、損益計算書に費用が発生します。
現代の会計では、収益力の影響は単に現在の損益計算書にとどまらず、過去に貸借対照表に計上した資産をも動かします。本業の収益力が高ければ、税効果会計で繰延税金資産を計上することができます。一方、収益力が悪化すれば、既に積んだ繰延税金資産を取り崩さなければなりません。また、減損会計が適用されると、既所有の固定資産を減額しなければならなくなります。それは当然に、資産減額の反対勘定として、損益計算書の損益を再び揺り動かします。
つまり、本業の収益力の悪化の影響は本業だけに止まらないのです。今の収益が続くという前提で貸借対照表に計上してある資産価格の修正も迫ります。本業の収益の悪化は意外と幅広い波及効果を持ち、最終損益に打撃を与えることに注意しなければなりません。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)