さらに反論は次のように続きます。
「将来予測が主観に基づき、客観性が保てないということは、その通りだが、企業によって置かれた環境や保持する能力が違うことは当然であり、そうした差異が財務諸表に表現されるのも、これまた当然だ。そこで重要なことは、財務諸表作成の基礎となった将来予測をどのように行ったのかという説明が説得力を持つことだ。投資家は財務諸表に表現された数値結果だけではなく、その説明も含めて投資判断をするのだから、投資家に納得性のある説明をできるかが問われる。」
将来キャッシュフローの現在価値を重視するのであれば、会計理論的にはその通りなのでしょうが、そこで気になるのは税務です。税務で経済の将来予測に基づいて引当金を設定しても、認められません。なぜなら、税務では担税力のある利益と公平性が重視されるからです。
税務では実際にキャッシュで納税しなければなりませんから、キャッシュの裏付けのある利益が求められます。また、すべての納税者に納得して税金を納付してもらうには、公平性も欠かせません。担税力のある利益と公平性を担保するためには、将来予測ではなく、過去の実績をベースに税務計算をすることが当然の帰結になります。
担税力のある利益と公平性は税務の生命線ですから、税務としては過去の実績重視は譲れません。一方、会計は投資家目線をより強め、将来予測にウェートを傾ける方向にあります。とすると、税務と会計の乖離が益々広がっていくのは避けられない情勢です。
財務諸表利用者は会計と税務の目的の違いから発生する差異を十分に理解して、財務諸表を活用しなければなりません。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)